80%ぐらいのがんばり

娘との生活や読んだ本など

堀越英美『女の子は本当にピンクが好きなのか』で紹介された海外のおもちゃ

理系・文系なんて分け方がナンセンスだ!といいたいのだが、わたくし、疑うことなき文系人間です。得意科目は国語と社会科。理科系なら唯一生物が好きだった。数学は小学校の算数の長さでつまずき、高校での化学は「これ日本語???」というレベル。物理は選択科目だったんだっけ?高校物理を学んだ記憶が一切ないのだが。本当に習っていないのか記憶から抹消したのか…。

しかし、文系人間ほど理系的なものに憧れがあるのも事実。自分が文系であるという自覚が強いからこそ、わが子には先入観なく、数学や科学に親しんでほしいと願っている、要するに虫の良い親です。

そんな中、読んだのが堀越英美『女の子は本当にピンクが好きなのか』。

女の子は本当にピンクが好きなのか (ele-king books)

女の子は本当にピンクが好きなのか (ele-king books)

 

本書は「ピンク」をテーマに、女性とピンクの歴史、最近の女児玩具カルチャー、女性(女の子)の自意識とジェンダーの問題にも踏み込んでいます。私を含めて女性は、小さいときから「女」という性の影響をものすごく受けているのだなと再実感。

女の子=ピンクのイメージに違和感がある方、海外(主にアメリカ)の最新女児カルチャーを知りたい方、ジェンダーの問題に関心がある方など、本書は「ピンク」を入口に多くの問題の示唆に富んでいるので一読の価値ありです。

さて、私はジェンダーの問題に関心がないわけでもありませんが、この本で1番興味を抱いたのが第2章ピンクへの反抗と第3章リケジョ化するファッションドールの項目です。

女の子は本当に理系が向いていないのではなく、「数学や化学が苦手なのが女の子らしい」という社会認識に縛られているという指摘には納得。そもそも「リケジョ」という表現そのものが、女性が理系であることが珍しいという前提があるわけで…。

『女の子は本当にピンクが好きなのか』では、オバマ大統領が就任以来STEM教育の推進を測ってきたことが記されています。

STEMとは「Science, Technology, Engineering and Mathematics」の略。

アメリカでも科学技術分野への女性の進学率・就業率の低さは顕著だったようで、科学技術分野を支える人材の育成は国家的な重要事項と考えられていました。

そうした中、既存のおもちゃは男の子は空間把握能力が伸びるようなブロックなどの種類が充実しており、冒険・宇宙などのテーマも幅広いのに対し、女の子向けのおもちゃはピンク・パステルカラーでプリンセスが出てくるキラキラ系、舞台はおうちやお庭が多く「お世話」「かわいさ」という領域に限定されていると保護者たちから問題視されるようになりました。

結果、アメリカでは、STEM教育に役立ち、女児の知的好奇心を刺激するおもちゃや新しい女の子のあり方を模索したおもちゃが誕生していくことになります。一種の「アンチピンク運動」とも呼べるものです。

この新しいおもちゃが本当におもしろい!


Roominate: Way Better Than a Dollhouse 

自由にドールハウスを組み立てられるルーミネイト。電気の配線も自分で考えて、扇風機を回したり、ライトをつけるなどの電子工作が可能!

これはほしい…。ドールハウスで遊びだけでなく、作る喜びも味わえる。昨今のDIYブームを考えると日本でも商品化してほしいですね。

shop.lego.com

2012年に発売された女の子向けレゴ「レゴフレンズ」。パステルカラーのレゴ、結構みかけますよね。このシリーズが発売されてから、10パーセントに満たなかった女子のレゴユーザーが27パーセントまで伸びたとか!

しかし、既存のレゴを愛する人々からは、「レゴフレンズ」という女児向けのキッドを作ってしまうと、女の子はそれ以外のレゴを男の子向けだと思って逆に近づかなくなるのでは?という懸念も聞かれたそうです。

興味を持ってもらうためにやったことが、逆にその他の商品への敷居を高くするのは難しい問題ですね。そもそも分けることのそものが「差別」という考えもありますし。

他にも「女の子レゴがすることはおうちで過ごしたり、お買い物にでかけるだけ。男の子のレゴはもっと冒険するのに!」という4歳の女の子の声にこたえて、レゴはレゴフレンズではなく、女性の科学者、天文学者、古生物学者をモチーフとした研究所セットも発売しました。実際の女性科学者がこのセットを使って、日常を再現するTwitter@LegoAcademicsも人気です。


Project Mc² | OFFICIAL TRAILER

STEM要素を取り入れたファッションドールプロジェクトMc2。

ドラマ版は、科学やハッキング、電子工作に興味持つ「リケジョ」たちがスパイ組織の一員としてミッションをこなすハチャメチャコメディです。

ドラマやアニメの中に「科学要素」を入れるっていうのはめちゃくちゃ有効な理系教育だと思います。日本でも、科学要素を取り入れたアニメが妖怪ウォッチ並みに流行ったら、理系志望が爆発的に増えたりして…!?

お次は既存の女児カルチャーへ抗っているファッションドールたち。


Lammily - Average is Beautiful

19歳のアメリカ人女性の平均体形をモデルにしたラミリー人形。

脂肪やそばかす、妊娠線などもシールで再現できるらしい。

なにもそこまで…と思うが、スーパーモデルバービー人形とは真逆をいってるんでしょうね。バービー人形が女の子の摂食障害や体への自信のなさに繋がるという問題はよく聞かれます。

でも、バービーはバービーでエンジニアになったりして理系の職業にチャレンジ中らしく、彼女は彼女でキャリアウーマン道を邁進しててなかなかたくましい。

www.lottie.com

リアルすぎるラミリーちゃんが苦手なら、イギリス生まれのロッティーちゃんがおすすめ。

9歳児らしい体形で、ファッションもショートパンツやロングTシャツ、靴はハイヒールなしで、親が子供に買い与えたい健全さに満ち溢れている。

でも実は、宇宙飛行士に憧れる6歳の女の子のリクエストで、天文学者ロッティーが登場。国際宇宙ステーションまで宇宙旅行にいったりしてるすごいやつです。

アメリカはアニメの規制も厳しいですが(アニメ版『おさるのジョージ』は内容の健全さ・帽子のおじさんを含めた登場人物の良い人レベルにマジでびっくりする)、保護者団体がおもちゃ屋で男女でコーナーを区切るのはやめるように抗議し、要望が実現しています。

でも、日本で「リカちゃんやママは台所に立ってるのに、パパが新聞読んでるだけなのは性差別を助長してる!」とか訴えたら、モンスターカスタマー扱いされかねませんよね?

ルーミネイトなどの女児向け工作おもちゃは、最初はクラウドファウンディングから始まっているのも特徴的です。日本でも多くの女児を科学技術の世界に誘うようなおもちゃが今後登場してほしいですね。

私自身は、男女でおもちゃの種類が違うことに対し、今までほとんど違和感を感じたことはありません。娘はまだ2歳なのでおもちゃも「積み木」「ブロック」「絵本」など基本的なものが主流で、そこにピンクやパステルカラーが入る余地はあんまりなかったです。

でも読後に近くのトイザらスに行ってみたら、対象年齢3歳くらいから女の子向け、男の子向けで売り場がわかれてました。女の子の売り場の装飾はやはりピンクで、お人形やドールハウス、お店屋さんセットなんかがやっぱり多かったです。

無意識的に「女の子はここ!」と押し付ける前に、この本に出会えてよかった。 

作中では「ピンクカラーの罠」といって、日本の女児の憧れる職業は総じて低賃金であるという現実にも触れられています。

お値段が2400円+税とやや高めですが、子供、とくに女の子を育てている親御さんは一読の価値あり!

なお、著者の堀越英美の訳書『ギークマムー21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア』も面白いのでオススメです。